SG名
金融 × ブロックチェーン
概要
ブロックチェーン技術の金融ビジネスへの応用を考えるために、まずは伝統的金融インフラの仕組みを理解したうえで、その課題や現在の先進的な取り組みを理解するSGです。お金とは何か、送金はどのように実現されているのか、株式や国債、社債といった証券はどのように発行・取引・移転されているのか、誰が台帳を管理しているのか、市場取引は具体的にどのように行われているのかといった既存金融インフラの仕組みを学びます。これらが抱えている課題をブロックチェーン技術がどう解決していこうとしているのかを実例で理解していきます。
運営責任者・担当
芝野 恭平(Kyohei Shibano):東京大学大学院工学系研究科 特任研究員 博士(工学)
https://researchmap.jp/shibano
東京大学ブロックチェーン公開講座の運営・講義を担当し、ブロックチェーンの応用研究に従事。プロトコル設計に精通し、技術的な制約や課題を踏まえた実用的なアプローチを探求している。特にブロックチェーンの活用領域を広げることに関心があり、現在はゼロ知識証明を活用した新たな応用方法の提案とその可能性の追求に取り組む。加えて、Nonagon Capital にも関与し、海外のクリプト領域におけるプロジェクトや技術動向に関する知見を有する。
協力・監修
本SGのカリキュラム設計にあたっては、SBI金融経済研究所副島豊氏の協力・監修のもと、既存金融の実務的視点を踏まえた構成としています。
副島豊(Yutaka Soejima):SBI金融経済研究所 研究主幹
1966年生まれ。京都大学卒、90年日本銀行入行。調査・市場・決済・プルーデンス・クオンツ・国際部門ほかフィンテックセンター長や金融研究所長を歴任。90年代よりAI、ビッグデータ、ネットワーク分析など様々な先進的手法を中央銀行リサーチに導入。金融システムレポートほか代表的なレポートを創刊。BIS・グローバル中央銀行活動のエキスパートメンバーとして金融規制策定や市場モニタリング、CBDC等に関する国際会議に参加。SBIホールディングスAI・デジタル戦略推進室を兼務。
目的
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既存金融、とりわけ決済システムを中心とした金融インフラの構造を基礎から理解する
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マネー、資金決済、証券決済、市場取引を相互に関連づけて説明できるようになる
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DeFiや金融・実物資産のトークン化を既存金融との連続性と差異の両面から検討できるようになる
進め方
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全8回のゼミ形式で実施します
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ガイダンス時に参加者を8つのグループに分け、各グループに担当回を割り当てます
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各グループは、担当回での発表に向けて、事前に資料の読み込み、論点整理、課題への解答作成、発表資料の作成を行います。
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各回は担当グループが発表を行い、その内容をもとに他の受講生および外部から招聘した専門家と議論を行います
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専門家として、大学教員、金融機関、DeFi実務家などの関与を予定しています
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講義を一方的に聴講する形式ではなく、事前準備と議論参加を前提とした運営を想定しています
※ 本SGは発表とディスカッションを中心に進行します。議論では、制度や仕組みの前提、論理の整合性について具体的に問われるため、発表内容はその場で検証・深掘りされることを前提としています。
スケジュール
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実施期間:5月28日から7月30日
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開催頻度:全9回(初回はガイダンス)
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曜日・時間:毎週木曜日18:30を予定(各回の時間・日程は変更になる場合があります)
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各回の所要時間:18:30より2時間。最大2時間半を予定しています。
開催場所・参加形態
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会場:東京大学本郷キャンパス内講義室
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オンライン参加:可能
各回の予定
※ 各回の予定は予告なく変更になる場合があります。
ガイダンス
全体の流れの説明と、グループ分け、各回の担当割りを行います。
第1回 お金とは何か・銀行振込
紙幣・預金・電子マネー・ステーブルコイン・トークン化預金を比較し、「お金」をその三大機能、債務と信用、受容性、等価性、決済インフラの観点から整理する。
銀行預金を送金する仕組みを分解し、どのような主体や決済インフラの関与のもとで処理されているかを理解する。
集中清算機関の仕組みとリスクを理解する。
第2回 クレカ決済・電子マネー・外為送金の理解
各支払い手段について、関与主体・処理プロセス・リスク管理を整理する。
決済を、台帳更新・債権債務調整・信用供与・ファイナリティの観点から理解する。
第3回 証券はどこに存在しているのか
株式や国債・社債が台帳上の記録として存在していることを理解する。
CSDや振替制度をもとに、所有関係や名義管理の仕組みを整理する。
第4回 証券はどのように移転するのか
約定・清算・受渡の違いを整理し、証券移転のプロセスを理解する。
DvPや証券CCPなど、決済リスクを抑える仕組みを分析する。
第5回 市場取引制度
株式・国債・社債市場を題材に、注文、約定、在庫管理、価格形成といった市場売買の仕組みを整理する。
取引所や、ディーラー、ブローカーなどの取引仲介機能を担う主体がどのように取引を成立させているかを理解する。
第6回 伝統的金融資産市場とDEX
第5回で学んだ伝統的金融資産市場とDEXにおけるAMMやその進化系を比較し、価格形成や流動性供給の違いを理解する。
DeFiにおける分散性と、実際の依存関係を整理する。
第7回 DeFi × RWA
実例を参考に、各種のDeFiプロジェクトを理解し、その金融機能を分解し、金融・実物資産の市場にどう応用されているかを理解する。
DeFiを用いることで、資産の利用可能性や流動性、運用方法がどのように拡張されうるかを整理し、新しい応用可能性を探る。
第8回 ケーススタディ / 総合演習
これまでの講義で扱った論点を踏まえ、実際のトークン化プロジェクトをより深く詳細な解像度をもって改めて分析する。これを初回時の実例理解度と比較する。
各プロジェクトについて、何が変わり、何が変わっていないのかを整理し、金融インフラの観点から評価を行う。
各回の事前課題・準備学習
各回の受講時には事前準備が必要です。
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事前課題の有無:あり
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想定作業量:発表担当回の指定資料の読解と、要約・論点整理・課題への回答を含む事前準備が必要です。また、自身の担当ではない回についても予習を行うことで議論に参加しやすくなります。
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提出物:発表準備資料の作成
本講義では、生成AIの活用を前提としていますが、表層的な要約や整理にとどまる理解では不十分です。
発表時のディスカッションでは、前提となる制度や仕組み、論理の整合性について詳細に問われるため、内容を自分の言葉で説明できるレベルまで理解を深めることが求められます。
応募要件
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各回の事前資料を読み込み、発表および議論に主体的に参加できること
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事前準備(読解・整理・発表準備)に取り組む時間を確保できること
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ChatGPTやGemini等の生成AIを利用し、文献整理や論点整理を行える環境があること
参加形態について(個人・法人)
本プログラムは、以下のいずれの形態でもご参加いただけます。
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個人としての参加:学生・社会人を問わず、個人として応募・選抜を経て参加する形態です。下記「応募方法」よりご応募ください。
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共同研究枠としての活用:企業等の組織に所属する方が、研究の一環として参加する形態です。企業様が抱える具体的な課題に合わせて研究テーマを個別設計し、その解決に向けたリサーチの場として本SGを活用する「共同研究」スキームも提供しています。自社内だけでは完結しにくい課題を、本講座の知見やSGでの多角的な議論と直接接続することで、新たな価値を創り出すことを目指します。
※共同研究スキームでの活用にあたっては、個別の研究計画に応じた研究費等のご負担をお願いしております。 課題設定や実施体制の詳細については、お問い合わせフォーム https://www.blockchain.t.u-tokyo.ac.jp よりお気軽にご相談ください。
こんな方に向いています
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既存金融の仕組みを表層ではなく構造として理解し、その上でブロックチェーンの位置づけを考えたい方
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RWA、ステーブルコイン、トークン化などのテーマを、制度・台帳・市場設計の観点から捉え直したい方
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金融(銀行、決済、証券、資本市場など)またはブロックチェーンに関心がある方
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制度資料や調査レポート等の文献読解、および情報整理に抵抗がない方
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抽象的な概念(台帳、信用、流動性など)を言語化しながら考えることに関心がある方
想定される成果物
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本SGでは、全体を通しての最終成果物の提出はありません。
定員
25名程度
選抜方法
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書類選考:応募時には以下の応募課題を提出してください
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面談の有無:あり
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応募多数の場合の扱い:書類選考、その後面談を実施し選抜を行います
応募課題
事前課題として以下のレポートを提出していただきます。
また、指定資料の読解およびプロジェクト分析を通じて、「なぜ今ブロックチェーンが金融で議論されているのか」「何が変わりうるのか」を構造的に理解してください。
提出形式
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形式:Word / Google Docs / PDF等のドキュメント
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分量:4〜6ページ程度(図表・参考文献を除く)
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生成AIの利用:推奨(ただし情報ソース、内容を理解し、自分自身の論理として再構成すること)
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以下に記載の「プロジェクト分析課題」のAからFすべての解答をレポートとしてください。
課題内容
(準備)指定資料の理解
以下の観点から、指定資料の内容を整理・理解してください。
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なぜ今、ステーブルコイン、RWA、トークン化が注目されているのか
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市場規模、主要プレイヤー、ユースケースにはどのような広がりがあるのか
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ブロックチェーンは、現在の金融システムのどのような課題を解決すると主張されているのか(それは本当か)
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制度、決済、信用、法的権利、金融法規制の面でどのような制約や未解決論点が残っているのか
指定資料:
1. a16z, State of Crypto 2025
クリプト業界の現状、主要ユースケース、業界でどの論点が注目されているかを把握する。
https://a16zcrypto.com/posts/article/state-of-crypto-report-2025/
2. BIS/CPMI, Tokenisation in the context of money and other assets
トークン化を、お金・資産・台帳・制度設計の観点から整理する。
https://www.bis.org/cpmi/publ/d225.pdf
補助資料:
ステーブルコインとトークン化預金とホールセールCBDC(前編)
https://sbiferi.co.jp/report/20260325_1.html
プロジェクト分析課題
関心のあるトークン化証券、ステーブルコイン、トークン化預金、RWAなどのプロジェクト(例:BUIDL、Ondo、JPモルガンKinexys、USDC等)を一つ選んでください。任意のプロジェクトを選択していただいて構いません。
それについて、以下の問題に沿って分析してください。
A. プロジェクトの概要と利用者
そのプロジェクトは何を提供しているのか。
また、それは主に誰に使われているのか(個人、機関投資家、金融機関、発行体など)を整理しなさい。
B. 解決しようとしている問題
そのプロジェクトは、金融システムのどの効率性や不便さ、コストを下げようとしているのかBIS/CPMIを参照しつつ分析せよ。
以下の観点を参考に整理すること:
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発行コスト
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市場取引コスト
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所有の移転や受渡コスト
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アクセス制約(参加者・時間・地域)
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可分性・市場流動性
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取引や決済がそもそも困難であること
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所有や取引の情報参照の困難性やコスト
C. オンチェーンとオフチェーンの境界
そのプロジェクトにおいて、
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何がオンチェーン化されているのか、何がオフチェーンに残っているのか
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何が依然として伝統的金融インフラに依存しているのか
を整理しなさい。
また、そのプロジェクトがなぜそのような構造になっているのかを説明しなさい。
D. 制度・設計上の成立条件
そのプロジェクトが機能するためには、どのような制度・運用・設計が必要か。
以下の観点を含めて論じること:
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発行主体と信用
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準備資産・裏付け
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償還(redeemability)
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カストディ・鍵管理
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KYC / AML
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法的権利(何を保有しているのか)
E. 構造的評価
そのプロジェクトについて、以下を整理しなさい:
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実際に変化が起きている部分(利用・アクセス・UXなど)
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制度・インフラとしては変わっていない部分(決済、信用、法的構造など)
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変わらない(新規に作れない、作っても機能しない)理由
F. 総合判断
そのプロジェクトについて、
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既存金融を置き換える(代替する)ものに近いのか
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既存金融を前提として補完するものなのか
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既存金融の一部を再設計し直したにすぎないものか
どの位置づけに近いと考えるかを明示したうえで、その理由を述べなさい。
注意事項
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参照した文献やWebサイトは、すべて参考文献としてレポート内に明記してください
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単なる要約ではなく、論点を整理し、仕組みを具体的に記述してください
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専門知識の量ではなく、「論理的に整理して説明できているか」を重視します
FAQ
Q. 金融の専門知識がなくても参加できますか。
A. 参加自体は可能ですが、本SGは既存金融の仕組みを基礎から丁寧に扱う一方で、資料読解と議論参加を前提としています。受け身で受講する形式ではないため、継続的な準備時間を確保できることが重要です。
Q. ブロックチェーンの技術実装を学ぶSGですか。
A. 本SGの中心は実装ではなく、既存金融インフラの構造理解と、それを踏まえたブロックチェーン活用の検討です。特に債券市場、決済、証券移転、流動性、DeFi、RWAを対象に議論します。
Q. どのような学び方になりますか。
A. 各回の指定資料を事前に読み、受講生が要約・論点整理・課題回答を準備したうえで発表し、その内容をもとに専門家や他の受講生と議論するゼミ形式です。
応募方法
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Detailed application procedures are currently provided in Japanese only.Please refer to the Japanese version of this website for application information and registration.



