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2025年度公開講座受講体験記:「なんとなく」の理解から、確かな「武器」へ。チケット流通の現場で私が学んだブロックチェーンのリアル(社会人・チケット業界勤務)

  • 執筆者の写真: shibano
    shibano
  • 2月27日
  • 読了時間: 6分

 

1. 自己紹介

私は現在、エンタテインメント業界でコンサートやイベントの「チケット流通」を支える企業に勤務しています。

華やかなステージの裏側で、興行ごとの座席を管理したり当日のチケット販売窓口でスタッフ達のサポートをしたりするのが私の仕事です。チケットは、ファンの方々にとって「夢へのパスポート」とも言える大切な存在です。だからこそ、システムトラブルで入場が遅れるようなことは許されません。そんなシビアな現場の最前線で、日々業務に向き合っています。

 

また、本業とは別に、個人的な趣味としてNFTプロジェクトのコミュニティ運営(モデレーター/MOD)をお手伝いしていた経験もあります。そのおかげで、「ブロックチェーンには改ざんできないという特性がある」「転売防止に役立ちそうだ」といった知識は、なんとなく肌感覚として持っていました。

 

2. 受講動機と期待

この講座を受講しようと思ったきっかけは、実は昨年の「心残り」からでした。

本来は昨年度に受講したかったのですが、ちょうど勤務先の大きなプロジェクトと重なってしまい、やむを得ず断念した経緯があります。当時、先に受講していた友人たちが「すごく勉強になるけど、内容は本格的だよ」と苦戦しながらも受講していたことを覚えていて、「今年こそは絶対に挑戦しよう」と決めていました。

 

そしてもう一つ、私には確かめたい「仮説」がありました。

仕事でチケットの不正転売や管理の煩雑さに直面するたび、「ブロックチェーンなら解決できるはず」という期待を持つ一方で、しかしながらあの処理速度で数万人の同時入場を捌けるのだろうか、という疑問も消えませんでした。現場が求める処理性能にブロックチェーンが耐えられないとしたら、既存システムとうまく組み合わせるハイブリッド型が正解なのではないかとも考えていました。

この自分の考えが正しいのか、それとも知識不足による誤解なのか。感覚ではなく、ちゃんとした技術の知識を持って「答え合わせ」がしたい。それが、受講を決めた一番の理由です。

 

3. 講座内容と体験

受講中は、まさに「仕事と学びの両立」との戦いでした。毎週火曜日の夜、オンラインで講義を受け、どうしても参加できないときはアーカイブ動画を視聴。時には代休を使って、東大本郷キャンパスまで足を運び、対面講義の熱気を感じることでモチベーションを高めていました。忙しい日常から離れてアカデミアの空気に触れる時間は、とても良いリフレッシュになりました。

 

講義の内容は、想像どおり硬派なものでした。特にブロックチェーンの仕組みである「コンセンサスアルゴリズム」や「ブロック生成時間」について学んだ時、私の仮説は確信に変わりました。パブリックチェーンでの処理は、やはり今のままでは入場ゲートの瞬時判定には向かない、ということを技術的な理屈として理解できたことで、全てのデータをチェーンに載せるのではなく、大事な権利情報だけを刻んで、判定はオフチェーンで行うというハイブリッドな構成こそが、今の私たちに必要な現実解だと腹落ちしました。

 

また、新しい発見もありました。「ゼロ知識証明(ZKP)」という技術です。

これを使えば、個人情報を明かさずに「チケットを持っていること」や「成人であること」だけを証明できると知り、プライバシー保護が厳しくなるこれからのチケット業界にとって、大きな希望だと感じました。

逆に、「抽選」をブロックチェーンで公平に行うことの難しさ(乱数生成の課題)や、外部データを取り込む際のリスク(オラクル問題)など、安易に導入することの危うさも学びました。「なんでもブロックチェーンにすればいいわけじゃない」と気づけたことも、大きな収穫です。

 

硬派な学びの一方で、純粋に楽しかったのが「みんなでNFTを作るプロジェクト」です。

これは講義とは別に有志で取り組んだ企画なのですが、4つのチームに分かれつつも、全員で一つの「共通テーマ」を議論して決定。私たちはそのテーマに基づいて、各チームでデザインを考案しました。ただ静止画のNFTを作るだけではなく、最初は日本の伝統的な『水引』のイラストだったものが、元旦を迎えると自動的に『コイン』の絵柄に変わる(リビールされる)という仕掛けを実装しました。「自分たちが作ったものがブロックチェーン上に刻まれる」というワクワク感を、仲間と共有できたことが最高の思い出です。

 

さらに、本講座では希望者を対象としたグループワークも平行して実施されました。そこでは、メンバーでどんなアプリを作るかアイディアを出し合い具体的な形に落とし込んでいくプロセスを経験しました。私がいたチームは実際に動くアプリまでは作れませんでしたが、その代わりにシステムの設計図となる「ライトペーパー」をみんなで書きました。「この仕様だとガス代(手数料)が高すぎるね」「ここはオフチェーンに逃がそう」なんて議論をしながら、現実的なシステムを考え抜いた経験は、コードを書くこと以上に「現場で使える視点」を養ってくれたと思います。

 

4. 受講後の変化

受講を終えて、私の中のブロックチェーンに対する意識はガラリと変わりました。

これまでは「なんとなく凄そうだけど、現場では使えないかも」というモヤモヤした状態でしたが、今は「ここには使える、ここは使えない」と、自信を持って整理できるようになりました。

「ブロックチェーンは魔法の杖じゃない」。その限界を知った上で、「じゃあどう使う?」と考えられるようになったのが、一番の成長だと感じています。

 

業務でも、「ブロックチェーン導入」の話が出たときに、「使う・使わない」の二元論ではなく、「どの部分をオンチェーンにして、どこを既存システムに任せるか」という具体的な設計の話ができるようになったと思っています。リセール市場を健全化しつつ、現場のスタッフやお客さまに負担をかけない、そんな理想のシステムの輪郭がはっきりと見えてきた気がします。

 

そして今、私の興味はさらに広がっています。

チケット単体の管理にとどまらず、ファンコミュニティ全体の価値を高める仕組みづくりにも関心を持つようになっています。

例えば、ファンクラブにDAO(分散型自律組織)のような仕組みを取り入れて、ファンがもっと納得感を持ってチケット抽選に参加できたり、運営側の管理コストも下げられたりするような「次世代のエコシステム」の構築も考えられるのではないかと感じています。

そんな未来を実現するために、今後は働きながら通えるビジネススクールへの進学も視野に入れて、もっと深く学んでいきたいと考えています。

 

5. これから受講を検討している方へのメッセージ

最後に、これから受講をしようとしている方へ。

正直に言うと、この講座は「流行りのWeb3を知りたい」という軽い気持ちだけで受講すると、少し面食らうかもしれません。数式が出てきたり、技術的な壁にぶつかったりすることもあります。

 

でも、もしあなたが「ブロックチェーンの本当の可能性と限界を、ちゃんと知りたい」と思っているなら、これ以上の場所はありません。

無料なのに、内容は超本格的。特に私のように、今の仕事にブロックチェーンを持ち込むことに「違和感」や「疑問」を持っている人にこそ、強くおすすめしたいです。そのモヤモヤを解消するヒントが、きっと見つかります。

 

仕事が忙しくても、アーカイブ視聴だけでも十分価値があります。プログラミング実習も、無理に完走しようとせず「仕組みを知る」ことに集中するなど、自分なりのペースで大丈夫です。

現場の肌感覚と、理論的な裏付け。この2つが揃えば、あなたの視野はもっと広がるはず。ぜひ、新しい知の世界へ一歩踏み出してみてください!

 
 

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自己紹介 私は、Web2領域で活動しているフリーランスのソフトウェアエンジニアです。地方在住、フルリモートで業務をしていて、比較的柔軟な時間管理が可能な働き方をしています。理系専攻で大学院を修了しており、ウェブ技術に加え一定程度の数学的素養も有しています。   ブロックチェーンとの関わりはほとんどありませんでしたが、米国トランプ大統領の2期目就任後の、暗号資産の盛り上がりを受けて「資産」として興味

 
 
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